組織案内

設立趣旨

私たちは、日常の生活において、各種の商品を購入し、サービスを利用し、また、融資を受けるなどの経済活動を行っているが、近年、商品・サービスの多様化、サラ金・クレジット利用の一般化など、消費者環境の変化に伴い、様々な消費者被害、トラブルが激増している。こうした状況については、佐賀県も例外ではなく、高齢者・若年者を対象とする悪質商法による被害、多重債務・ヤミ金被害、その他の消費者被害はあとを絶たず、広範囲に及んでおり、多くの者が、資産を一挙に奪われ、生活設計は崩壊し、ときには、自殺にまで追い込まれる等、深刻な事例が少なくない。

また、消費者が商品・サービスを選択する際の重要な手がかりとなる表示・広告についても、虚偽の情報提供がなされたり、提供されるべき情報が示されない不表示や誇大表示が付された商品・サービスが流通する等、消費者の適正な選択の機会が確保できない状況も少なくない。
さらに、消費者の取引と選択の前提である商品の「安全」が損なわれた結果、消費者の生命・健康・財産が不当に侵害される事件・事故も減る傾向にはない。

消費者が安全・安心な消費生活を送ることは、生身の人間である消費者にとって当然の権利―「消費者の権利」―であり、国と自治体の両者が主体となって推進する消費者行政が、かかる権利を尊重・擁護し、安全・安心な消費生活を守る担い手であることは、昭和43年に制定された(旧)消費者保護基本法に明示され、平成16年に改正された消費者基本法の定めるところでもある。

平成21年に、消費者庁及び消費者委員会が設置され、国レベルの消費者行政は新たな体制となったが、その施策の状況、国と自治体の関係、消費者行政の財政的基盤などについては、現在も多くの課題を抱えている。

自治体は消費者行政の窓口であるとともに「第一線の現場」としての機能を果たしているが、その現場においても、十分に対応しきれない事例や、解決に至るまで多くの時間とコストの費消を余儀なくされるケースが少なくない。問題となる事業活動を行う事業者に対する効果的な対応と消費者の被害からの救済のために、行政の外から行政を支援し、場合によっては民と行政が連携・協働することにより、限られた行政資源を可能な限り有効に活用することが必要とされる。また、消費者被害の予防のための啓発活動は行われているものの、消費者教育の実施には至っておらず、消費者基本法に定められている「消費者教育を受ける権利」に対応した施策を推進する必要がある。

任意団体である「佐賀消費者フォーラム」が平成15年に設立された背景には、こうした自治体の消費者行政を補完し、支援するための民の力が必要とされる事態が惹起していたこと、この事態に対処するために専門的な知識と経験が結集することへの期待と要請があった。
 

申請に至るまでの経過

平成15年10月に、前記「設立趣旨」に賛同した佐賀県内で活動する弁護士、司法書士、消費生活相談員、生協理事、消費者団体の長、大学研究者等が、任意団体「佐賀消費者フォーラム」を設立し、現在に至っている。この7年数か月の間、広域自治体である佐賀県、基礎自治体である県内の市町(村)に対して、複数の政策提言、申入れを行ってきた。また、毎年11月に設立記念集会を開催し、その年ごとに重要な又は緊急性のあるテーマについてのシンポジウムを開催してきた。この他、平成16年5月には佐賀県知事を招へいした佐賀県消費生活条例の改正のためのシンポジウムを、また平成20年5月には、国における消費者行政一元化に向けた動向を踏まえ、2名の国会議員と全国相談員協会理事長をパネリストに迎え、地方の目線から消費者主役の新たな消費者行政のあり方を問う緊急シンポジウムを開催した。
このほか、貸金業規制法の強化に向けた改正に際して、佐賀県弁護士会、クレサラ対策協議会等との共催により、数回のシンポジウムを開催し、また街頭で広報活動を実施した。

また、消費者基本法に基づく自治体における消費者教育の早期の実現を図るため、大学生と佐賀消費者フォーラムのメンバーによる合同セッションを開催し、両者協働による「消費者教育テキスト」を平成19年から作成し県内の全ての高等学校に配布しているほか、消費者庁・消費者委員会、文部科学省、国民生活センター、全相協、日本消費者教育学会、九州各県の教育委員会等のステークホルダーにも配布することを通じて、地域の大学を基点とした消費者教育モデルを提案する活動を継続している。

当フォーラムは、上記のとおり消費生活の安全・安心を確保するための活動を行ってきているが、現時点においても、佐賀県内では、消費者の権利や利益を現に損ない、又は損なうおそれのある事業者の事業活動又は事業者団体の活動が少なくない。かかる事業者や事業者団体の活動によって、消費者がトラブルに巻き込まれることを防止し、また現に被害に遭った消費者を救済するため、自治体の消費者行政が最善を尽くしているものの、行政だけでは十分に対応できない実態がある。消費者問題に精通した専門職を構成員とする佐賀消費者フォーラムが、専門的知見に基づき、消費者行政をサポートし、また事業者や事業者団体の不当な事業活動の差止・改善のためのアクションを講じることにより、佐賀県民の消費者被害の予防と救済に貢献することは急務であると思われる。ところで、現在の任意団体の立場においてかかる差止要求・改善要求を行う場合には、相手方に対する効力という面で効果が乏しい・又は十分な効果が期待できないことに加えて、相手方の対応いかんによっては訴訟提起に発展する可能性がある等、任意団体の立場では実質的に対処することが困難な事態が想定される。したがって、事業者、事業者団体等による消費者の権利や利益の侵害に適切かつ効果的に対処するためには、現在の任意団体ではなく、法人格を有する団体であることが求められる。

さらに、地域における消費者の権利や利益に対する侵害行為、とりわけ頻発している特定商取引法に違反する行為や、消費者の適正な選択の機会を損ない、場合によっては重大な生命・健康被害に連なる可能性のある不当景品表示法に違反する優良誤認に係る不当表示に対し、事業者又は事業者団体に対して効果的な差止請求を行うためには、国からの認証を受けた適格消費者団体であることが望ましい。現在任意団体である当団体に対しては、既に平成21年頃から市民や行政から、適格消費者団体としての資格を持って活動することへの期待等が表明されているが、この認証を受けるためにはNPO法人格を取得した団体であることが要件とされていることから、かかる市民や行政の期待に応えるために、法人格の取得に向けた申請を行うことが求められている。


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